トータスMEDAL
manufactured by かみの工作所
2015
product design
キッズデザイン賞(2018)/グッドトイ賞(2020) 受賞
学生だった時、大学に行かずにアナログゲームを作っている時期があった。一人でルールを考えて、一人で工作室で旋盤やボール盤を動かしてピースを作り、完成させても誰とも遊ばなかったゲームが10個くらいある。このエピソードからもわかるように、私は当時とても暗かった。時はながれて2014年、かみの工作所でゲームをテーマにした発表会を行うことになった。いろいろなデザイナーがさまざまな観点でゲームをつくるなか、誰でもすぐに遊べるシンプルなゲームを作ろうと考えた。足して10にする神経衰弱。スペシャルルールのようなものも、一発逆転のようなメダルもない。ただしちょっとした戦略をたてることができる。シンプルなルールはいくつかのヴァリアント(地域ルールのようなもの)をうむことになり、結果として、このゲームは非常に受けいられることになった。小さな子は算数の基礎を身につけるし、介護施設などでも遊ばれているということがわかった。発表当初はカップ型で、これはこれでカポカポする音が気持ちいいのと、カップがたくさん並んでいる姿が可愛くて好きだったが、強度の問題で厚紙を用いたメダル型のものを販売することにした(その後「トータスタス」という付属ゲームも発表)。多くのメディアに取り上げていただいたおかげで、アナログゲーム市場では3000個売れればヒットと言われるなかで、これまで3万個以上で販売されている。販売数もさることながら、キッズデザイン賞を受賞したことで、デザインとしての価値を、グッドトイ賞をいただいたことで、おもちゃとして認めてもらったことが何よりも嬉しい。あの頃の暗かった自分に、続けていれば良いこともあると教えてあげたい気分になる。